七

 顔を見合わせた状態で、先に口を切ったのは綱吉の方だった。
「獄寺くん、シャマルのこと知ってるの?」
 不思議そうに、袈裟を着込んだ男の名前を確かに呼んだ獄寺に尋ねると、獄寺はどこか憮然とした表情をしながらも綱吉の問いに頷き、答えられた返事に綱吉は再度「へえ」と目を見張る。
 シャマルとは、並盛村の西端にある山寺に居着いてしまった僧のことだ。
 元は廃寺であったその寺を住処とし、薬師としての技術を持っていて医者の真似事を時折している。医者のいなかった村として彼の登場は有り難いものであったのだが、如何せん当人の性格のせいで、村への受け入りは至極歓迎とはいえなかった。
 いつ如何なる時だろうと人を茶化す物言いや、見るからに戒律を破っているだろうと解る頭髪や服装。そして、何よりも女が好きと言って憚らない態度に言動。
 女性と見ればそれが人妻であれ婚礼を控えた娘であれ、年嵩のいかぬ少女だろうと口説き、果ては手を出す始末なのだ。見栄えだけはする顔をしているものだから、女性陣から徹底的に邪険にされることはないものの、男性陣には無論目の敵にされている。
 さらに医者の真似事さえもその恩恵に預かれる者は女性だけで、男性陣は門前払いだ。食い下がったところで、「唾つけて飯食って寝ろ」等と如何にも適当な応えしか返らない。
 そんなシャマルと、今までの接触からどこか生真面目な印象が残る獄寺との関係を綱吉には想像しえなかった。 (獄寺くん、都から来たって言ってたし……そこで会ったのかな)
 シャマルの方も一見して修験者というよりは、放蕩三昧した挙げ句に浮き草のような旅を続けているように見える。ならば都にて二人が出会うこともあったのだろうと、綱吉はそんなところで考えをまとめた。
「――んなことより、おい」
 傍目にはぼんやりとしているように見える綱吉を獄寺が揺さぶり、しかし傍目にどう見えようとも本人は至極真面目に考え事をしていた所であり、そんな時に肩を強く掴まれて綱吉はびくりと身体を震わせた。
「な、なに?」
 慌てて取りなすようにして言葉を促す。
 獄寺は既に挙動不審な綱吉の態度には慣れてしまったのか、少しも気に掛けた風は無かった。変わらぬ仏頂面のまま綱吉に尋ねる。
「てめえ、今リボーンって言いやがったか?」
「……言った、けど?」
 全くの予想外の言葉に、綱吉はきょとんと目を瞬いた。
 獄寺は答えを聞いてから更に仏頂面に磨きをかけ、眉間に皺を寄せる。それは綱吉がそうであるように、脳内に存在する辞書から『リボーン』という項目の検索を掛けている様子だった。
「獄寺くん?」
「……いや、なんでもねぇ」
 訝しげに綱吉が尋ねると、獄寺は渋々といった感じで脳内の辞書から意識を浮上させ、むっつりと口を真一文字に結んだ。
「どっかで聞いたことがあるような気がしただけだ」
 恐らく、脳内辞書からは望むことが引き出せなかったのだろう。
 不服そうな獄寺の横顔を眺めながら、綱吉は「ふうん」と相槌を打った。
「シャマルもそうだけど、横文字なんて珍しいしね。……もしかして、リボーンの奴とも会ったことがあるんじゃない? あいつもこの村出身じゃないし」
「この村出身じゃない?」
「うん。今は俺の家で居候中」
「…………捨て子だったのか?」
「え、……うぅん。そういえば、どうなんだろう。両親のことって聞いたことないかも。でも、義弟って訳でもないし、家の養子でもないよ」
 あれ。でも、沢田リボーンに改名したとか何とか言っていたような気もするし。とブツブツ言葉を呟きながら空を仰いで眉根を寄せ始めた綱吉を、獄寺が胡乱な目で見据えた。
 その視線に気づいた綱吉は空からパッと獄寺へと視線を戻し、取りなすように笑顔を浮かべる。
「でもま、ホント、不思議な奴だから。もしあいつが胎児の頃の記憶を持っているって聞いても……多分、信じちゃうと思う。―――あっ、じゃあさ。獄寺くん、リボーンに聞いてみれば。さっきも言ったけど、本当にめちゃくちゃな奴だからきっと会った事があるなら、あいつの方が覚えてるんじゃないかな。獄寺くん、目立つし」
 最後、ぽろりと零した言葉に獄寺の瞳が陰った。綱吉はその変化を見据えて、しまったと獄寺とは違う意味で顔を青ざめる。
 どうやら獄寺が髪色や瞳の色で劣等感を感じているらしいことは、流石の綱吉も気が付いた。鈍い綱吉とて昼時の会話を幾度か思い返せば、その場で瞬時に気づかなくとも後々には気づくのである。
 綱吉は一人あたふたとパフォーマンスを繰り広げてから、意を決したように獄寺の手を取った。その手をぎゅっと握りしめ、驚いたように見開かれた翠色の瞳を強く覗き込む。
「誉めたんだよ!」
 獄寺の目が、一瞬、呆気にとられたかのように瞬いた。
 綱吉はパッと握りしめていた獄寺の手を放す。それから火照った頬を掻きながら、視線も定まらないままにぼそぼそと口ずさんだ。
「お、男にこんなこと言うのは変だけど……獄寺くん、美人だし。綺麗だし」
「……マジで、男に言う言葉じゃねえ」
「だ、だよねぇ。でも、事実だから! 自信持って!」
 ハハハと小さく笑いを零してから、綱吉は握り拳を作って意気込む。
「…………」
 暫く、時間が流れて。綱吉は獄寺に握り拳をかざすようにした格好のまま硬直した状態で、時間が秒刻みで進むごとに冷や汗が背筋を流れた。
「え、ええーっと…」
 獄寺は、黙ったまま。決まり悪く綱吉は視線を泳がせながら、意味もなく口を開きながら何か話題はないかと、先程獄寺がしたように記憶の書とも言える脳内辞書を当てもなく捲る。
 それから本の少しの時間で探り当てたソレを見つけ、綱吉は生き返った表情をしながら勢いよく辞書を閉じた。
「だから、一応リボーンに聞いてみようか、獄寺くん。というわけで。なあ、リボーンお前……」
 握り拳を解きながら、綱吉はリボーンとシャマルがいる方へと振り返る。そうして居るはずの童に向かって声を掛け、しかし綱吉はそこで目を剥いた。
「あっ、こらリボーン!」
 気づけば、リボーン共にシャマルは随分と綱吉達と距離を空けていた。綱吉は小さくある背を追って駆け、また獄寺もそこでやっとシャマル達が近くと言える場所から離れている事に気づき、綱吉に続くようにして駆ける。
 リボーンは歩幅の差を感じさせずに、シャマルの横を歩いていた。綱吉が呼びかけても足を止める気配を見せず、また振り返ろうともしない。
 流石にそのリボーンの態度には腹に据えかねて、綱吉はムッと顔を顰めた。
「おいコラ。リボーン! 無視するなよ。だいたいお前、今までどこに居たんだ。朝から見えなくて心配したんだからな!」
「まーまー、落ち着けって沢田の坊主」
 息巻く綱吉に対してリボーンではなく、シャマルが相の手を挟む。
 けれどそのすぐ、獄寺がシャマルの背後をとって容赦なく蹴りを入れた為に、前のめりにシャマルの身体が傾げた。綱吉はわっと小さく声を上げ、一歩後ろへと退く。
 獄寺は、蹴られた腰を手の平で撫でている男を冷ややかに見下した。その視線を物ともせず、シャマルは前のめりになっていた上体を起こす。
「ったくよぉ、相変わらず礼儀の知らんガキだな、てめえはよー」
「うるせっ。んなことより、何でテメェがここにいやがる?」
 ギロリと瞳を剣呑に吊り上げ、獄寺はシャマルを睨み付けた。
「何で、ってなぁー…。つーか俺から言わせりゃ、お前こそ『何で』ここに居るんだよーって言わせてほしいね。まあ、見当は付くがな」
 やれやれと言わんばかりに肩を竦められ、獄寺はひどく苛立ったように瞳を一瞬だけ強く輝かせた。だが、すぐに気を取り直したようだった。凄むように、うっすらと口の端を持ち上げて冷笑を浮かべる。
「フン、だったら俺がわざわざ言うまでもねぇな。何でテメェがここにいるかは知らねぇが、俺の邪魔だけはするな。邪魔したら、殺す」
「おーおー、怖いねぇ。寝小便を漏らして泣いていたあの洟垂れ小僧が、よくぞここまで成長したもんだ。感動で涙がちょちょ切れるよ」
 シャマルは涙を拭う真似をする。
 それに、ぷっちん、と獄寺の中の何かが切れた。
「―――殺す! ぶち殺す!!」
「うわああっ、ごっ獄寺くん落ち着いてー!」
 知己との再会というには、どうにもキナ臭い殺伐とした雰囲気に、おろおろと狼狽えてばかりだった綱吉はそこにきて獄寺を止めにかかる。
 騒動の張本人であるシャマルは飄々としたまま、先程から高みの見物を決めているリボーンもまた、息巻く獄寺を止めようとはしなかった。そのあんまりな無関心ぶりに、綱吉の方が腹立たしく感じるほどである。
 そうして綱吉の意識が一瞬逸れたのが悪かったのか、荒々しく振り払われた獄寺の腕にされるまま、綱吉は数歩後ろへとよろめいた。
 それを見たシャマルが嘆くようにして額を抑えながら天を仰ぐ。
「短気なとこは変わらねーなぁ。そんな事じゃ女の子に持てねーぞー?」
「てめえはマジでいっぺん死ね!」
 茶化しているとしか聞こえないシャマルの言動に、獄寺は間髪入らずに暴言を吐いた。呼吸も荒く息巻きながら、獄寺は自分の懐へと手を素早く差し込む。
 そこから出てきた物に、綱吉は目を丸くした。
(お、……お札…?)
 予想の範疇を遙かに超えている。
 獄寺が懐から取り出し、右手に掴んだ物は長方形の、言ってしまえば紙だった。ただ紙面にはミミズののたくったような筆跡が見え、綱吉の知るところではソレを護符と呼んでいる。疫病除け、火災除けと種類は様々であるが『護符』が意味するのは魔除けだ。
 獄寺はその護符を堂々とシャマルに向け放つ。
「くらいやがれ!」
 綱吉は、困惑した。
 至極真面目な顔をしている獄寺には悪いが、混乱を極めた。
(くらえって―――お札を?)
 そんな馬鹿な。どんな攻撃だ。
 一瞬、護符に当てられたシャマルが苦しげに悶える姿が脳裏に浮かびあがったが、直ぐに首を振って打ち消す。
 そんな馬鹿な考えを綱吉がしている間に事態は動いており、深く考え始めようとしていた綱吉を浮上させたのはゴキ、と低く響いた鈍い音だった。俯いていた顔を上げ、目に入ってきた光景に愕然とする。
 獄寺の頸部に、リボーンの短い足が食い込まれていた。
「……な、…な…」
 背後から一撃。
 己の背丈の何倍もの高さを跳んだリボーンは、そのままくるりと一回転して見せながら鮮やかに地面に着地してみせた。そして獄寺はといえば膝から倒れるでもなく、腕で頭を庇うこともなく地面へと身を傾げ、綱吉は悲鳴を上げた。
 ひらり、と獄寺の指の間から抜けた札が舞う。
「ご、獄寺くんしっかりー! って、うわ。白目剥いてる。……じゃなくって、リボーン! おまっ、なんつーことを!」
 意識を失った獄寺の上体を抱き起こしながら、綱吉は顔を真っ青に染めながら素知らぬ顔をしている童子を叱りつけた。けれど当の本人は厚顔さながらに綱吉を罵る。
「うるせー、ダメツナ。それが山火事になる恐れを未然に防いだ救世主たるオレへの態度か」
「はあ!? な、なんだって?」
「それが山火事の恐れを未然に防いだ救世主たるオレへの態度か」
「…………」
 綱吉は、沈黙した。しかしその沈黙は何もかもを理解した沈黙であらず、またリボーンの言葉を妄言と捉えた挙げ句、この子可哀想な子なのかもしれないと思い立った沈黙でもなく。
(きゅ、救世主? 山火事? 未然に防いだって何を。え、山火事を? 誰が。ええぇー?)
 ただ単に、何一つ理解できなかった為の沈黙だった。
 頭の中で整理されない言葉がぐるぐると円を描くように回っているので、何か言おうと口を開いても言葉にはならない。暫しの混乱後、綱吉は纏まらない考えを吹き飛ばすかのように大声を張り上げた。
「とっ、とにかく! 獄寺くんに謝れよな、リボーン」
「……それが山火事の」
「それはもういいっつーの! だいたい、山火事を防ぐのと獄寺くんの首を蹴りつける事と、それに何の関係があるんだよ?」
 憤慨しながら「意味不明なこと言って言い逃れられると思うなよ」と声も低く詰問すべく綱吉はきつくリボーンを睨め付けた。綱吉に睨み付けられたリボーンは無機質な瞳で見返していたが、その視線がふと逸らされる。
「おい、リボーン」
 咎めようと声を低く呼びかけた。
 すると逸らされていた視線は戻り、けれど直ぐに見ろと言わんばかりに顎である方向を指し示される。お叱りを受けている子供の態度ではないが、そのどこか有無を言わせぬ雰囲気に呑まれて綱吉は渋々とリボーンが指し示す方へと顔を向けた。
 雲雀の背を追いながら下ってきた登り坂の街道には特に突出した物は見当たらない。ここ一番の黄昏時を過ぎた夕陽は既に沈みかけ、凡庸とした風景が広がっている。
 ぼんやりとその目に映る光景を眺めていると、またしても不思議なほど高く跳んだリボーンによって、綱吉は頭を叩かれた。
 ぎゃっと悲鳴をあげ、叩かれた頭部を押さえ込む。じんじんと痛む頭部に涙を浮かびあがらせながら、綱吉はリボーンを睨んだ。
「なにするんだよ!」
 紅葉のような手で叩かれただけだというのに、まるで金槌に殴られたかのようである。
 突然の暴挙に憤慨する綱吉であったが、リボーンも何故か苛立っていた。舌打ちを隠しもせずに言い放つ。
「うるせー、ダメツナが。だからダメツナだって言うんだ、お前は。あれだ、あれ」
 あれを見ろ、とリボーンが指し示したのは先程獄寺が取り出した護符だった。
 "ダメツナ"と二回繰り返された綱吉は、叩かれた頭部とは別に心にじくじくと傷を付けながらリボーンが指し示した護符を見る。それは獄寺の手から離れ、今は地面へと身を倒していた。ほんの少しの微風で吹き飛ばされそうな、何でもないお札である。
「あれを見てどう思う」
 唐突に掛けられた言葉に、綱吉は目を白黒させた。
「どうって……」
 どうか思うべきなのだろうか。
 綱吉にはソレは、ただのお札にしか見えない。確かに獄寺があの札をシャマルに突き出して「くらいやがれ」なんて言った時は驚いたが。しかし、それを素直に口にできるほど綱吉は怖い物知らずでは無かったので、必然的に口から出る言葉は濁った。
 けれど綱吉の意図は察せられたのだろう。リボーンは綱吉のダメダメ加減に苛立ちを越え、嘆息するように吐息をついた。
「お前に推理力がねぇことは知っていたが、まさか想像力もねぇとはな。一度お前の頭の中身を見て、ぐちゃぐちゃになるまで脳みそ掻き回してぇな」
「怖いことさらっと言うなー!」
 ぞわっと立った鳥肌に身震いしてから、綱吉は叫んだ。
「仲良いなぁ、お前ら」
 そこへ微苦笑を浮かべたシャマルが、リボーンが指し示し、獄寺が落とした護符を拾い上げながら二人の会話に入る。拾った護符はそのまま自身の懐に仕舞い込み、まだ意識の戻らない獄寺の前へと膝を折り曲げ、腰を落とした。
 そうして獄寺の顔を覗き込み、ふうむ、とシャマルは己の顎を撫でる。
「一撃必殺、だな」
「一撃必殺、だぞ」
 間髪入らずに返ってきた淡々とした返事に、シャマルはガックリと肩を落とした。そうして微苦笑を浮かべながら、どこか恨みがましくリボーンを振り返る。
「で、これを運ぶのは誰よ? 俺ぁゴメンだぜ。野郎を背負うなんて」
 シャマルの懸念はそれらしい。綱吉はハッとした。
 確かに、普通に考えれば気を失った獄寺を運ぶのはシャマルが適役だろう。リボーンはいくら弁が立とうまだ赤ん坊であるし、綱吉は獄寺より小柄だ。意識のない獄寺を運ぶには荷が重い。まさか意識の戻らない相手を道端に捨て置くわけでもないだろう。
 だから必然と該当されるシャマルは、これ以上なく嫌ーな顔をしたのだが、それは次のリボーンの言葉で杞憂に終わった。
「いや、運ぶのはお前じゃない」
「と、言うと…」
「ああ」
 つい、と見詰められる二対の瞳に、綱吉は冷や汗を流した。
「修行の一環だぞ、ツナ」
 円らな、無機質な瞳に見据えられながら告げられた一言に、今度は綱吉がガックリと肩を落とす。逆に一転して表情を明るくしたシャマルは馴れ馴れしい態度で綱吉の肩を叩き、「いやー、残念だなぁ。隼人の奴が女の子だったら俺が替わってやったんだがなぁ。ま、頑張れよ坊主」と心にも無いことを、否、心の底からの声を掛けてきた。
 綱吉はぶつぶつと愚痴を零しながら獄寺を背に担ぐ。そしてとぼとぼと歩き出した綱吉の背へと、リボーンが追い打ちをかけるように言った。
「獄寺の奴はシャマルが居着いている寺まで運べよ。あと、急いだほうがいいんじゃねーか。お前ここに来るのに仕事ほっぽって来ただろ」
 最初はだったらやっぱりシャマルが運べばいいじゃないかと文句を垂れた綱吉であるが、後の言葉を聞き「あっ」と声を張り上げる。
「早く戻って使った道具片付けろ。それで飯食った後に山寺に行くぞ」
「……は?」
「ママンに言っていくの、忘れるなよ」
「いやいやいやいや! ちょっと待て!」
 リボーンからの上から目線は既に慣れたとはいえ、その言葉の内容に綱吉は精一杯に待ったをかけた。制止をかけられたリボーンは何だ、と綱吉を仰ぐ。
「何で寺!?」
 ひどく短く、綱吉は聞きたいことを端的に尋ねた。
「あー、それなぁ。お前さんに話があるんだとよ、な、リボーン。お前さんも何か聞きたいことあるんじゃねーか?」
 それに答えたのはリボーンではなく、シャマルだった。
 綱吉はリボーン、シャマルと顔を順に見回してからそういえばと口を切る。
「二人は何でここに? つか、……仲良いの?」
 リボーンが沢田家に現れたのはおよそ一年前であるが、その間にシャマルと会ったのは数えるほどしかなかったはずだ。もちろん、リボーンは綱吉といつも一緒にいる訳ではないから、その間に仲良くなったのかもしれないが。
 胡乱な視線で綱吉が二人を見据えると、その視線を気にした風もなくシャマルは「な?」と促した。
「あるだろ、聞きたいこと。だからちょっと来いよ、話すだけだからそんな時間かかんねーし」
 つーか時間かけたくねーし、と告げるシャマルの言葉に、綱吉はそれこそ渋々と頷いた。


← Back / Top / Next →